
豊富な水をたたえる美しい姿から“日本一美しい円筒分水槽”といわれる「東山円筒分水槽」。国内有数の工学系団体である土木学会(東京都新宿区、池内幸司会長)の選奨土木遺産にも2021年に認定されました。選考委員を務めた竜田尚希さんに東山円筒分水槽の歴史的価値や魅力について聞きました。

―選奨土木遺産の制度の目的を教えてください
「土木遺産の顕彰を通じて歴史的土木構造物の保存を目的とした認定制度です。制度は2000年に創設されました。対象となる土木構造物は、ある程度の年月が経った構造物で、使用の有無に関わらず歴史的、文化的、技術的といった視点で価値を選考して認定します」
「土木構造物の価値が評価されて国や県に指定されれば残る一方、何も指定されなければ取り壊されるリスクがあります。そこで、土木学会が価値のある土木遺産を認定して、保存を後押しします。認定した土木構造物が、いずれは国や県に指定されることも期待しています」

―改めて東山円筒分水槽が選出された理由を教えてください
「長年にわたり水不足に悩まされてきた片貝川流域へ合理的かつ公平に分水する技術や、地域に貢献し続けてきた歴史的価値、そしてその美しさなどが評価されました」
「特に歴史的視点で、水争いの解消に貢献した役割は注目すべきポイントです。夏場に水が少なくなると、上流側で水をせき止めてしまうため、下流側では水が大きく減少して稲が育たず、争いにまで発展していました。そこで、各地域の土地の面積比に応じて公平に水を分水し、地域間の水争いに終止符を打ったのです」

―技術的な価値については
「円筒分水槽は、耕地面積の比を円周長で比例分割し、上流からの水量の変動に左右されずに公平に分水する仕組みです。東山円筒分水槽では、川の下をくぐり『サイフォン』の仕組みを使って、高低差と水圧を利用して水を勢いよく噴き上がらせ、東山、青柳、天神野の3つの水路へ分水します。ポンプで水をくみ上げているわけではないので電力などの動力が一切かからない環境にやさしい装置とも言えます」
―景観としての価値は
「東山円筒分水槽には展望できるエリアがあります。解説を読んだうえで展望エリアから見渡せば、田んぼに水を公平に分配する目的や、その精巧な仕組みがより理解できるのではないでしょうか。また、フォトスポットにもなりますし、水が湧き出る東山円筒分水槽とその先に広がる田園風景は一見の価値ありです」

―東山円筒分水槽を含む土木遺産をめぐるのも楽しそうですね
「富山県内には、ほかにも黒部ダムや富山県営立山砂防施設群、小牧ダム、五厘堤といった複数の選奨土木遺産があります。東山円筒分水槽のように自由に見学できる構造物や、中には定期的に見学会などを開催している施設もあるため、ぜひ実際に足を運んで、その歴史や風景を体感してほしいです」
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