
魚津市内の山々では雪どけが進み、鮮やかな新緑が僧ヶ岳や毛勝三山といった名山を包み込んでいます。本格的な夏山シーズンを前に、登山者が心躍らせる一方、富山県警察本部によると2025年の県内山岳遭難件数は過去最多の165件(前年比38件増)、遭難者数は178人(同41人増)に達しました。山行を楽しむ大前提として守らなければならない“安全登山”。登山者の心構えや備えなどについて、富山県警察本部で山岳警備隊副隊長を務める小髙浩明さんに聞きました。

―富山県内における山岳遭難の状況を教えてください
「去年(2025年)の山岳遭難件数は165件、遭難者数は178人でした。県内に残る記録では過去最多です。夏の遭難が多く、早い時期から梅雨明けのような気候になって登山者が多く押し寄せ、遭難事故も多発したと言えます。過去の事例を踏まえても登山者が増えると比例して事故の件数が増える傾向にあります」
―魚津市内における山岳遭難の発生件数はどうでしょうか
「去年の魚津における発生件数は2件で遭難者数は3人でした。6月に発生した事故では、雪渓で2人が滑落し重傷を負いました。また、9月に発生した事故では、20代男性が山行中に掴んだ石がはがれて滑落し、軽傷を負いました。例年、富山県内では立山や剱岳などへ入山するエリアで事故が多発し、魚津市内の山では年間、数件発生しています」
|初夏の山では未整備の登山道や不安定な雪渓などに要注意
―毛勝山や釜谷山、猫又山で構成される毛勝三山や僧ヶ岳といった名山を山行する登山者は一定数いると思われます。初夏の山道におけるリスクを教えてください
「シーズン初めは一般登山道でも整備が進んでいないため、危険箇所が残っているケースや、登山者が少なく踏み跡(人が歩いた跡)が不明瞭で道に迷いやすい場所が多く存在します。また、沢沿いのルートであれば雪渓が不安定になったり、穴が空いたりし崩壊の危険があります」
―魚津市内からでは日帰りの山行が想定されます。用意すべき装備について教えてください
「日帰りといえども非常時の装備は欠かせません。代表例でいえば、ヘッドライトやツェルト(緊急避難用簡易テント)、登山用ガスカートリッジとガスバーナー、非常食などです。非常食と言うと大げさに聞こえるかも知れませんが、パンやおにぎり、お菓子といった行動食を多めに持っていくとよいでしょう」

|熱中症対策も重要、適切な給水と塩分補給を
―蒸し暑い気候では脱水や熱中症も懸念されます。どのような対策が必要でしょうか
「市内の山は比較的登山口の標高が低く、歩きはじめは鬱蒼(うっそう)とした樹林帯を抜けるため、汗をどっとかき、エネルギーの消耗も大きいです。水分やエネルギーを細めに補給してください。塩分と水分の吸収を助ける熱中症対策用タブレットを携行するのも対策の一つです」
―山行時の給水量を教えてください
「一つの目安として『給水量(ミリリットル)=脱水量×0.7~0.8』という計算式があります。登山中の脱水量(ミリリットル)は『体重(キロ)×行動時間×5』で求めることができます。自身で試算した上で、多めに水分を持っていくと良いでしょう」

―最近、日傘を差す登山者もいますが問題ないのでしょうか
「登山中に日傘を差す行為は危険です。とくに転倒時に手が使えないため大きなケガにつながりやすく、また、強風時に風にあおられて転倒につながるリスクもあります。実際、室堂において登山者や観光客が傘を使用した際に、風にあおられて転倒したケースがありました。登山中の傘の利用は控えてください」
―天候の急変に対する備えについても教えてください
「基本的に登山者はカッパなどの雨具は持っていると思いますが、忘れないで欲しいのが『早出早着(早く出て早く帰る)』という基本行動です。夏山では、午後になると積乱雲が発達し、天候が悪くなる傾向があります。ゆとりを持った山行計画で登ってください」
―ただ、急な雷雨など予期せぬ天候になる可能性もあります。現地ではどのように対処すべきでしょうか
「雷鳴が聞こえたら行動を中止して避難してください。よく言われるように、木の根元から少し離れた場所へ避難したり、稜線から下ったりして、雷雨が通過するまでツェルトを被ってしのぐ必要があります」
|山岳遭難は誰にでも起こりうる、万全の準備で安全登山
―登山における基本動作の一つですね。こういった情報はどのような媒体を参考にすれば良いでしょうか
「山岳雑誌などが参考になります。また、個人的には国立登山研修所が公開しているテキスト『新・高みへのステップ』も良書です。ホームページからダウンロードもできるので閲覧してみてください」
―安全登山を実行する上で自覚すべきことは
「遭難する人は登山する人の1%にも満たないですが、アクシデントやトラブルに見舞われる可能性はゼロではありません。山岳遭難は誰にでも起こりうることなので絶対に準備は怠らないでください」
―登山者には安全登山を遵守した上で魚津を含む県内の山々をめぐって欲しいですね
「街から近いところに低山も標高の高い山もあるのが富山の特徴です。目標の山に汗を流して登頂し、山頂から見る自分たちの生活する街や海の景色は大変すばらしいです。是非、この夏は登山にチャレンジしてみてください」

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