
郷土の魚として親しまれている冬の味覚、ウマヅラハギが最盛期を迎えています。直近3年は100トンを下回っていましたが、今期は1月から2月中旬までの累計で約187トンと豊漁に。漁は3月中まで続く見通しです。魚津を代表する魚として、2008年から「魚津寒ハギ」と銘打ちブランド化を進めています。魚津漁業協同組合で代表理事組合長を務める濱住博之さんに豊漁の理由とブランド化への取り組み、おすすめの食べ方などについて聞きました。
―魚津のウマヅラハギに込める思いを教えてください
「ウマヅラハギは郷土愛を“醸し出す”ような魚です。その理由は、以前に戦中そして終戦の混乱期を生き抜いた人から、魚津の街では配給として米ではなくてウマヅラハギが配られたと書かれた手紙をいただきました。手紙を読んでウマヅラハギが魚津で長年漁獲され、配給するくらい量も多く、昔から市民にとって馴染み深い魚であると強く印象に残りました。そして、郷土愛=ウマヅラハギという考えに至ったわけです」
紛糾する会議
一筋縄ではいかないブランド化
―郷土愛を象徴するウマヅラハギ。いつからブランド化に向けて取り組み始めましたか
「平成8年に旧魚津漁協、旧経田漁協、旧道下採藻採貝漁協の合併を行い、漁協経営の合理化を図りました。平成16年には高度衛生管理型荷さばき施設『魚津おさかなランド』を建設。これらの取り組みが落ち着き、魚種のブランド化に着手しました。当時は全国的にもブランド化の潮流があり、県内においても新湊の紅ズワイガニや氷見のブリなどがありました。ただ、魚津にはなかったため、平成20年から地域ブランド化の取り組みとしてウマヅラハギを選定、『魚津寒ハギ』とネーミングも付けました」
―魚津ではさまざまな魚種が水揚げされます。ウマヅラハギの選定にあたっては紛糾したのではないでしょうか
「漁業関係者の皆さんは、それぞれがプライドと自信をもって漁業に取り組まれています。だから『自分が水揚げする魚種が一番』となり、会議を開いても『ブリが一番だ』『いやカニだ』『バイ貝もある』などと始まり、意見の集約には時間がかかりました」

活〆による差別化と関西圏の販路開拓がヒント
―侃々諤々の議論をどのように集約しましたか
「同じことをしても埋没します。そこで意識したのが差別化でした。現在よりも普及していなかった『活〆(いけじめ)』、いわゆる活魚を脳死させてから血抜きをする鮮度保持技術を生かした商品のブランド化に注目しました。さまざまな魚種を試す中で、ウマヅラハギも同じことをしたら、特に肝(キモ)において従来よりも美味しくなることが分かりました。肝はいわゆる肝臓で毛細血管がたくさん通っており、血も多いです。血が臭みなどの原因となり品質悪化にもつながります。つまり、活〆によって血を抜くため美味しくなるというわけです。これは差別化になると気づきました」
―ウマヅラハギに対する需要も重要ではないでしょうか
「実は能登半島の輪島の漁協へ視察に行った際にウマヅラハギが水槽で管理されていました。話を聞くと関西に出荷するウマヅラハギで現地では高値が付くことが分かりました。魚津では安い庶民の魚、ランクでも下の方に位置する魚として定着していたため、関西に出荷して高評価につながり、正直、衝撃を受けました。販路があることもブランド化においては重要なポイントとなりました。これらのポイントを踏まえて粘り強く地元漁業関係者や飲食店などを説得してブランドとして確立しました」
―「如月王(きさらぎおう)」というブランドも打ち出しました。通常の魚津寒ハギの違いは
「1月~2月にとれる寒ハギの中でもプレミアム、トップオブトップが如月王です。基準は魚津港で2月頃を中心に水揚げされる体長25cm以上の大型の天然のウマヅラハギが対象です。安静に、活〆脱血処理して品質を徹底的に管理しています。タレントで東京海洋大学の客員教授の『さかなクン』にも高評価いただきました」

底値が10倍以上!?大化けした魚津寒ハギ
―ブランド化の成果は
「例えば15年前はウマヅラハギの底値が1キロ当たり100円台や200円台、時には100円以下でした。それが、今は600円台や700円台、1千円台も当たり前になりました。大化けして漁業関係者も喜んでいます」
「非常に評価が低かったウマヅラハギだが、これは本来の評価ではないことが分かりました。ブランド化によって認知度を高めたことで全国から注文を受けるようになりました。さらに最近では海外からの需要も増えているようです」
寒波到来で今期は豊漁も地球温暖化の影響大きく

―近年は漁獲量が減少していましたが、今期、久々の豊漁となった背景は
「私見ですが近年の漁獲量の減少は地球温暖化が影響していると思います。一方で今期の豊漁は、北極圏からの強い寒気が流れ込み、ウマヅラハギも普段よりも多く接岸してきたと思います。さらに再度寒波が到来して2月13日も16.6トンの水揚げを記録しました」
肝和えに煮つけ、みそ汁、多彩なおススメ料理
―2月13日までの累計水揚げ量は
「1月から累計すると約187トンです。水温を見ながらにもなるが3月20日頃まで漁が行われる予定です」

―魚津寒ハギのおススメの食べ方は
「なんといっても肝和えが一番おいしいです。肝醤油に身をくぐらせて食べれば格別です」
―家庭料理としてのおススメの食べ方は
「肝も含めて丸々一匹を煮付けにするのが一番美味しい食べ方です。あと、大根を入れたみそ汁も最高です。肝ももちろん入っています。これもぜひ、味わっていただきたいです」
―現時点までのウマヅラハギのブランド化に対する評価と今後の展望も教えてください
「長年にわたりウマヅラハギのブランド化に取り組み、販路も広がってきて漁業関係者からも感謝の言葉をいただけて良かったと思います。今後も地元を含め国内を中心に消費が広がることに期待しています」