
魚津水族館のアイドル“ナガコバンのバンちゃん”が2026年4月1日に天国へ旅立ちました。訃報のニュースは瞬く間に広がり、SNS上では「バンちゃんありがとう」「安らかに。天国でも美味しいご飯を沢山食べてね」など哀悼の言葉が溢れました。
バンちゃんはコバンザメの仲間。エサが入ったバケツに頭部にある吸盤を上手にくっつける器用な姿を見せる一方、エサの時にしか動かないずぼらな姿などが可愛らしく、一目見ようと市内外から多くの来館者が水族館に足を運ぶきっかけにもなりました。
皆から愛されるバンちゃんを最も間近で接してきた一人、飼育研究係の吉岡映美さんにバンちゃんとの思い出を聞きました。

―ナガコバンの生態の特徴は
「比較的温暖な地域に住む魚です。コバンザメの一種のため、頭に吸盤が付いていて、ジンベイザメやマンタなどにくっついて暮らします。食性は肉食でジンベイザメなどが食べるアミエビといった甲殻類のおこぼれを食べます。まだまだ謎が多い魚で雌雄の区別も難しく、寿命もはっきりとは判明していません」
―比較的温暖な地域に生息するナガコバンが魚津水族館に来た経緯を教えてください
「2021年に射水市沖で定置網にジンベイザメが迷い込んだという連絡を受けました。ただ、水族館ではジンベイザメは引き取れないため、たまたま付いていたナガコバンを引き取り、飼育を始めました。それがバンちゃんです。2025年からバンちゃんと呼ぶようになりました」
―親しみやすいバンちゃん。さまざまな商品ともコラボしたようですが
「『寿司といえば富山DAO』さんや学芸員の担当者と共同でキーホルダーを開発して当館で販売しました。私もバンちゃんの缶バッジをデザインしました」
―缶バッジのデザインで意識したことは
「基本動きたくないのんびり屋の感じを飼育しているときにいつも感じていたので、この雰囲気をどのように表現するかこだわりました」

思い出の面白エピソード。バケツにくっつく特技は飼育員さんとのトレーニングの成果!?
―飼育時の思い出も教えてください
「私がダイバーで入ったときはほとんど動かないです。だから近くまでエサを届けていました。するとバンちゃんは、ダイバーがエサをくれると覚えたらしく、ちょっとずつダイバーに近寄るようになりました」
―学習するバンちゃんを見た当時を振り返ると
「普段はちょっとだらしないけれど、やっぱり賢い子だなって思います」
―一方で、だらしない姿を見せた印象的なエピソードはありますか
「閉館後の水槽内の掃除で、バンちゃんにどいてと移動を促すと、ほんの少し横に動いて『動きましたけど』と言っているようなドヤ顔をされました。それが本当に面白かったです。それから、動いたと思ったら水槽内を1周して元の位置の近くに戻ってきたりもしていました」

―面白いエピソードはたくさんありそうですね
「そうなんです。エサやりの後に私たちダイバーが、たまにバンちゃんのお腹とかを軽く触ったりすると体の半分だけ灰色になったりしていました。元々は白色で、普通は全部灰色になると思うんですが、わざわざ半分だけ灰色になって面白い生態だと思っていました」
―エサの入ったバケツにくっつく姿も見受けられましたが
「壁とかほかの生き物にくっつく魚なので、何かにくっついてくれたら嬉しいねとスタッフ間でも話が出ていました。ダイバーの体にアクリル板を付けてくっつけるようにする案もありました。そんな中で、エサやりのバケツの近くを泳ぐ頻度が増えて、気づいたらバケツにくっつき始めました。それで、バケツにくっついたらエサをあげるトレーニングを始めたら覚えて、頻繁にくっつくようになりました」
天国へと旅立ったバンちゃん。SNSには感謝や哀悼の言葉が溢れる

―そんな愛らしいバンちゃんが亡くなりました
「やはり寂しかったです。朝はいつも通りぺたって床に逆さまになってくっついていましたが、当日のダイバー担当が潜った時に異変に気付きました。その後、引き上げてみて亡くなっていることが分かりました。普段からあまり動かない上、亡くなってもコバンザメの吸盤はくっつくため、すぐに気づくのが難しくて」
―SNSでも大きな反響がありました
「コメントには『ありがとう』や『ちょっと寂しくなる』『もっと早く見に行けばよかった』などのコメントをいただきました。多くの方に愛されていたと実感しました」
―バンちゃんの飼育で得た経験をどのようにつなげていきたいですか
「水族館として野生の姿を見せられるようにするという使命を果たしながらも、バンちゃんみたいに生き物がいろいろな人に愛されるような展示を行っていきたいです。魚津水族館には魅力あふれる生き物がたくさんいるので、このポテンシャルを引き出していくのも飼育員の使命だと思います」
―改めて魚津水族館にとってバンちゃんはどういった存在でしたか
「『SNSでバンちゃんを見てきました』といった来館者が多かったです。魚津水族館を色々な人に知ってもらう上でもとても感謝しています。バンちゃんをきっかけにナガコバンを自身で調べて来る来館者もいて、生き物に興味を持ってもらうきっかけになった子だなと思っています」
―最後にバンちゃんのファンに向けてメッセージをお願いします
「天国に旅立って寂しいですが、バンちゃんが過ごした大水槽にはたくさんのさまざまな魚が今も暮らしていますし、今後もバンちゃんのことを忘れずにいてくれたらすごく嬉しいです」
