
魚津市では特産品の紅ズワイガニのブランドを高めようと、官民一体となって新たなイベント事業やPRの推進に乗り出しました。そして、推進する上で欠かせないのが魚津漁業協同組合(以下、魚津漁協)をはじめとした漁業関係者の存在です。燃料高で去年よりも漁の現場は厳しい環境ですが、市内外の需要に応えるため、今年も荒波の中、魚津漁協所属のカニ籠船3隻が出漁し、初日は約2.7トンの紅ズワイガニを水揚げしました。漁の本格シーズンを前に市内では46軒の飲食店が多彩なカニ料理を提供する「魚津❝カーニ❞バル2026」が10月1日より始まり、恒例の蒸し蟹をまるごと一杯楽しめるイベント「魚津蟹騒動」は「魚津蟹大騒動」にスケールアップして11月14日と15日に開催します。今シーズンの紅ズワイガニの水揚げ動向や魚津産紅ズワイガニのブランド力を高めるために必要な取り組みなどについて魚津蟹騒動実行委員会で代表を務める魚津漁協・代表理事組合長の濱住博之さんに聞きました。
漁業者の努力と技術が光る。魚津産紅ズワイガニの鮮度維持

―9月12日に今シーズン初の紅ズワイガニが水揚げされました。改めて魚津産紅ズワイガニの特徴について教えてください
「魚津産紅ズワイガニは、魚津港に水揚げされた段階でも生きている個体が結構います。それは、魚津の漁業者の努力の賜物です。20トン未満の漁船ですが、冷蔵設備を改良して鮮度保持に努め、カニ籠を引き上げる際もウインチを使ってなるべく短時間で引き上げます。カニにしてみれば水深800メートル~1500メートル付近の海底から海上に引き上げられるため相当ストレスがかかり、鮮度にも影響します。魚津の漁業者はこの負荷を極力減らせるように工夫しています」
―漁場が近いことも影響していますか
「ほかの地域と比べて漁場が近いため、水揚げ時間の操業時間も短くなり、良い鮮度の状態で紅ズワイガニを市場に流通させることが可能になります」
―水揚げされる魚津産紅ズワイガニを見ると大きな個体が目立ちますが、漁業者のこだわりでしょうか
「過去に魚津の漁業者、つまり漁師は大きな紅ズワイガニを求めて外海に攻めていった歴史があります。品質が良く、つまり、身入りが良く大きな紅ズワイガニこそ本当の紅ズワイガニで、良いカニという意識が現在の漁師にも連綿と受け継がれています。この意識というか精神は、魚津のカニ籠漁師の誇りであり、妥協は許されません」
個体のサイズや甲羅の硬さで選別。良質な紅ズワイガニを次世代に残すため水産資源保護にも尽力

―紅ズワイガニの入札にもカゴいっぱいに入った大きな紅ズワイガニが登場しましたね。入札ではどのようにランク付けされているのでしょうか
「多少の誤差は出ますが、大きいサイズから順にナンバー1、ナンバー2といったように4段階でランク付けするのが標準です。ただ、その時によって、特大や中大、中小といったサイズで、さらに選別する場合もあります」
「また、先ほどの4段階とは別でカニの甲羅の硬さによって選別する場合もあります。甲羅の柔らかいカニ、甲羅の硬いカニにいったん選別した後に、その中でサイズごとに分けるようなイメージです」
―ナンバー1のサイズに成長するまで、どの程度の時間がかかるのでしょうか
「紅ズワイガニの生態について詳しいわけではないけど、7~8年は経っている可能性が高いと思いますよ。あくまでも経験上の推測です」
―良質な紅ズワイガニを漁獲するためには長い時間がかかるため、水産資源保護も重要だと思いますが
「持続的な資源にするためには、ある程度の漁獲制限も大切です。需要が確かにあることは理解していますが、資源を次世代に残すことも考える必要があります。その一環として解禁直後は一定の自主規制期間を設けています。また、解禁直後は9月上旬で海面の海水温が高く、水揚げした紅ズワイガニへのダメージも大きいです。鮮度があまり良くない紅ズワイガニを流通させない利点もあります」
燃料高などの厳しい状況にも立ち向かう。魚津産紅ズワイガニの需要に応える地元漁師たち

―今年の紅ズワイガニ漁の見通しについて教えてください
「初日は良かったものの、今のところ、去年よりも水揚げ量は少ないです。理由はまだはっきりしません。大きいサイズも去年と比べると少ないですが、始まったばかりなので、これからに期待したいですね」
―漁をする上で、中東情勢などによる原油高の影響はありますか
「より良いカニが多く獲れるポイントを求めて、遠くの漁場に出たいと考える漁師も多いです。ただ、原油高の影響で遠くに行けば行くほど燃料費がかかり、利益に直結しますから、思い切って行けないという、もどかしい状況はあります」
―漁師の皆さんの苦労の末に、紅ズワイガニが届けられているのですね
「冬に入ると1日中海が穏やかな日はごく稀ですから、今の時期に獲れるポイントを見つけておく必要があります。冬はカニ籠を海に沈めて回収するだけで精一杯のため、移動して獲れるポイントを探すのは至難の業です。だからこそ今が勝負どきではありますね」
紅ズワイガニの提供を通じて、魚食文化や海業の発展も

―魚津市では官民一体で魚津産紅ズワイガニを推していこうと取り組みが本格化しています。濱住さんはどのように受け止めていますか
「(官民の動きを受けて)改めて上質な紅ズワイガニを持続的に提供する役割、責任を感じます。先人たちが、良質な魚津産紅ズワイガニを守ってきたように、需要が高まる中でも、守るべきものは守り、応えていく必要があります。また、魚津の紅ズワイガニを通じて、例えばカニ籠漁を含む魚津の漁業文化や歴史を少しでも若い世代に知って欲しい思いもあります。とくに、魚食文化は、日本の先人が築き上げてきた文化であり、紅ズワイガニを通じてほかの魚介類にも注目してもらい、海産物全体の消費拡大そして魚食文化の発展にもつながって欲しいですね。あわせて、食卓に並ぶ海産物を漫然と食べるのではなく、荒海の中、漁師が命がけで漁をして届けていることを少しだけでも理解しながら食べていただきたいです」
―魚津蟹大騒動への期待も高いですか
「日本人をはじめ外国人もカニ好きは多いです。そして、そのカニを食べる機会を作ってあげたいという強い思いから前身のイベントを含めて蟹騒動は始まりました。ただ、これまでの開催では数量面で十分に満足してもらえなかったため、今回は量を増やして少しでも多くの人にカニを食べられる機会を提供できるように改善しました。スケールアップして開催するため、ぜひ、楽しんでいただきたいです」
夢は「紅ズワイガニゾーン」の整備。気軽に紅ズワイガニを楽しめる街

―全国へ「紅ズワイガニの街・魚津」を発信する上でどのような考え方が重要でしょうか
「蟹騒動にも通じますが、魚津に来訪してもらう方向で発信することが重要です。東京や大阪など大都市圏で販売するというよりも、地元の魚津に来てカニを食べて、お金を落としてもらうことを考える必要があります。また、鮮度保持技術が高まったとはいえ、陸送などによって多少は鮮度が落ちるのに、輸送費などの経費を含めて価格は高くなります。消費者にとってどうでしょうか。個人的には、無理に遠くで売るよりも、鮮度の良い状態で地元の魚津で、手頃な価格で食べてもらう方が消費者の満足度も高いのではないでしょうか」
―濱住さんが想い描く「紅ズワイガニの街・魚津」の将来像とは
「海岸沿いや駅前で手軽にカニが食べられる街ではないでしょうか。毎日、潤沢に水揚げされるわけではないですが、漁業者や飲食店なども手を取り合いながら、街の中に『紅ズワイガニゾーン』などを用意して手軽に街中で食べられる環境ができたらいいですね」
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