
魚津水族館は、組織目標の中で2030年度の完全黒字化を目指していることがわかりました。足元では物価高やエネルギー価格高騰などの影響を受けて餌料費や光熱水費などのコスト増加が重荷となっていますが、入館者数や入館料収入は回復基調です。この勢いを逃すまいと、同館では一定の成果が確認された食に関する取り組みや情報発信を強化しつつ、既存展示の見直しや新たな展示コーナーの整備、市内事業者との連携による新サービスの造成などを進めて、利用者目線に立った持続可能な水族館への転換を目指します。
当連載では日本最古である魚津水族館の現状や二重価格検討の真意、黒字化のカギを握る取り組みを館長の清水悟史さんの思いとともに3回に分けて紹介します。

現存する日本最古の水族館である魚津水族館(1913年創立)。同館の年報によると記録が残る1981年度の入館者数は46万6千人を記録、以降、1991年度までは19万7千人~28万4千人の間で入館者数は推移していました。その後は減少傾向に転じ、1998年度~2024年度の期間では創立100周年リニューアルオープンが行われた2013年度を除くと18万人を下回る状況が常態化。同時に入館料収入も大きく減少して停滞していました。ただ、「明けない夜はない」という言葉があるように好転の兆しが現れます。
2025年度の入館者数が1998年度以降最多の18万9千人超に回復し、入館料収入は1億1664万円で1996年度以降最大となりました。要因として、2025年1月末日まで実施していたクラウドファンディングのほか、インスタグラムやXといったSNS発信の強化による知名度の向上に加えて、寿司ネタと水族館の生き物を紐づけた新たな企画や寿司ネタがプリントされた独創的な入館券、マスコットキャラクター「シャリササリ」などが観光客のニーズをつかみ、入館者の増加に寄与したとみられます。

清水さんは「職員や社外のアイデアが入館者のニーズにマッチした成果だと思います。改めて(顧客のニーズを起点とする)マーケットインの考え方が大切であることも認識しました」と話します。同館は入館者が求めるニーズを調査するため、2025年からアンケートも始めました。現状、9割超は応援メッセージや肯定的な意見が占めているそうで「本当にありがたい限りです」と清水さんは感謝を述べます。
今年4月に入っても入館者の波は途切れず、有料入館者数は前年同月比770人増でした。「引き続きSNS発信が功を奏していることや食を絡めた展示が入館のハードルを下げた結果、入館者が増えているのではないでしょうか」と清水さんは分析します。
ただ、手放しでは喜べない課題もあります。物価高やエネルギー価格の高騰などの影響です。同館の「餌料費」「燃料費」「光熱水費」の直近の推移をみると、まず生き物を飼育する上では欠かせないエサにかかる費用「餌料費」は2021年度から2025年度の期間で約31%増加。水槽の装置を動かす際に使われる重油などの費用「燃料費」も同期間で約40%、電気代や水道代などの「光熱水費」も同期間で55%それぞれ増加しました。さらに人件費も上昇しているため、自助努力によるコスト吸収に限界を迎えつつあります。

清水さんは「そもそも生き物を飼育する以上、命にかかわる『餌料費』『燃料費』『光熱水費』をむやみには削減できません」と事情を説明します。そんな厳しい条件の中でも、照明をLED化したり、厳密な水量管理で節水や電気代を抑えたり、残業を減らして光熱水費の削減につなげたりするなど取り組んできました。

それでも、各費用の高止まりに加えて老朽化対応や設備更新なども重なり、「正直、今の状況はきついです」と清水さんは心境を明かします。そのような状況下で検討が始まったのが、市民の入館料は据え置いて市外からの入館者の入館料を値上げする「二重価格」の導入です。
〈岐路に立つ、日本最古の水族館 ㊥〉では、二重価格の検討の真意に迫ります。
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