
加賀藩の台所を支えた鉱山「越中七金山(えっちゅうななかねやま)」。そのうちの3つの鉱山が集中しているのが魚津市です。一方で、その存在があまり知られていないのも事実。金山の特徴や魅力、観光資源としての有効性などを魚津埋没林博物館で主任・学芸員を務める佐藤真樹さんに聞きました。
―越中七金山(えっちゅうななかねやま)の調査を始めたきっかけを教えてください
「鉱山調査のきっかけは2019年に始めた砂金イベントです。魚津の川で砂金を見つけた寺島禎一さん、藤田秀治さんに教わって始めたこのイベントは大好評となりました。この砂金がどこで生まれ、どう流れてきたのか由来を探るため、鉱山の調査を始めました」
―越中七金山の概要を教えてください
「加賀藩が開発した鉱山の総称です。ただし、私が調べた限りでは、誰がこの名称で呼び始めたのかは不明です。また、呼ばれ始めた時期については、個人の仮説になりますが、江戸時代後半から使われ始めたのではないかと考えています」
―越中七金山を含む鉱脈は、どのように広がっているのでしょうか
「日本海が誕生した頃に活動した火山の堆積層が、佐渡から石川にかけて広がっています。鉱脈の範囲については、江戸時代に犀川(石川県)の上流域の金山発見者が『佐渡あたりまで金が採れる場所が続いている』と文書に残しています。現在は地質図などを確認して特定できますが、当時の人々は山並みなど自然の地形から読み取っていたと考えられます」

―越中七金山を「きんざん」ではなく「かねやま」と呼ぶ理由を教えてください
「江戸時代は、金属の鉱山全般を指す言葉として『かねやま』が通用していたからです。実際、これらの鉱山では金のほか、銀や鉛、一部では銅も採掘されていました」
―いつ頃まで採掘されていたのでしょうか
「多くの鉱山は、江戸時代のうちに採り尽くされていました。ただ、最盛期にはかなりの採掘量があり、国内でも主要な鉱山の一つだったと言えます」
―当時の具体的な採掘量はどれくらいだったのでしょうか
「実は、正確な数字は分かっていません。加賀藩が鉱山を運営するにあたって開発者から受け取った運上金(税金)の金額は記録に残っていますが、採掘量自体の記録は今のところ見つかっていません。佐渡のように幕府直轄領の地域では採掘量の記録も残っているのですが、越中七金山については未だ解明されていないのが現状です」
―松倉地区にある3つの金山の特徴を教えてください
「一般的に、10キロ圏内程度に密集している金山には同じ名前が付けられます。ただ、当時の新川地域は自治組織である『組(くみ)』が細分化されており、この組とそれぞれの金山が紐づけられていました。そのため、『松倉』『河原波』『虎谷』という独立した名称で各鉱山が管理されていたのが特徴です」

―金山の調査の中で興味深い発見などはありましたか
「去年の調査で、坑道内の地下水を外へ出す『水貫き』の跡を発見できたことです。古文書には記録が残っていましたが、これまで実際に確認できていなかったため、見つけた時は感動しましたね。併せて、『ノミ角(かど)』という掘削作業の1カ月ごとの進捗を表す跡も見つけました。いずれも嬉しい発見でした」
―観光資源としての利活用の可能性についてはいかがでしょうか
「上市町では、鉱山の地域に住んでいた人々が『下田ふるさとの会』を立ち上げ、小学生向けの鉱山の体験普及活動を40年近くにわたり継続しています。行政主導ではなく、地域住民の手で盛り上げていこうという機運を醸成することが必要だと思います。そのきっかけを作るのが、当館の役割ではないでしょうか」
―観光資源としての価値を秘めている一方で、坑道内には危険もあると思います
「落盤などのリスクがあるため、どのルートでどこを案内するかといったルールをつくり、安全に配慮する必要があります。また、金山がある土地は私有地であるため、立ち入りには地権者の許可が必要です。不法侵入を防ぐ対策を講じる必要があります。観光資源としての活用とともに安全対策やモラルを守るための体制をしっかりと整えなければなりません」

―金山の認知度向上に向けて、魚津埋没林博物館ではどのような取り組みを行ってきましたか
「代表例が『砂金採り体験』です。当館では市内の川などから採取してきた野草の根に付着した土や泥の中から天然の砂金を探してもらいます。当館ならではの体験を通じて、市内の金山に興味を持ってもらえるよう工夫しています」
―金山の周知には地域活動の拠点である「新・松倉コミュニティセンター」も活用できるのではないでしょうか
「個人的には、金山に関連する資料などを展示してほしいと思っています。また、コミュニティセンターを拠点としたツアーなども実施したいですね。金山や関連する歴史、文化を学べるハブとしても機能すれば、記録だけではなく子どもたちの記憶にもしっかり残ると思いますよ」
「以前、コミュニティセンターから講師依頼があり、松倉地区の子どもたちを連れて坑道に入るイベントを行った経験があります。今後もコミュニティセンターと協力して、こうした体験の機会を創出していきたいです」
―ツアー商品に金山を絡めても面白そうですね
「旅行関連の事業者から提案があればぜひ一緒にやりたいですね。現地での説明もしますし、坑道の散策を希望する場合は準備も整えますよ。観光の視点からも、ぜひ、多くの方に金山に注目していただけると嬉しいです」

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